月の裏側で会いましょう。

イラスト/たみお

 

ひそやかにオトナ三人でMOONについてお話しをしました。

ネタバレたくさん。どうぞお気をつけください。

当日までのお楽しみにしたい方は読まないでくださいね。

 

「頭を下げれば大丈夫」http://www.intvw.net/ で関西演劇人を紹介しつづけてくださっているタカハシさんのリードで、ユリイカ百貨店代表、演出のたみおと、

MOONの脚本を担当してくださった坂本見花さん(浮遊許可証)とで、

ひそやに、MOONについての対談です。

~2月某日チャットにて対談~

 

話し手――たみお(演出家)、坂本見花(脚本家)

聞き手――タカハシ(インタビュアー http://www.intvw.net/

 

タカハシ:参りました。よろしくお願いいたします!

 

たみお:ありがとうございます!

 

坂本:よろしくお願いします!

 

タカハシ:もう、私から聞いていく感じにしますか? それともお二人でご自由に?

 

たみお:できれば、きいていただけると助かります!

 

坂本:おなじく!

 

たみお:「密やかなオトナの会」を盛り上げて行きたく、大人の方が興味をもつようなリードができればありがたいと思っています。

 

タカハシ:かしこまりました。 密やかな大人の会、なんですね。これが一番気になりました!大人限定の会なんですね。ムードありそう。恋の話ですもんね。坂本さん的には、どんな恋の話なんですか?

 

坂本:む、いきなり核心をついたご質問。

 

タカハシ:たみおさんには、後で、その恋をどう扱いたいと思われるのか、そして何故そう扱おうと思われるのか伺いたいと思います。

 

坂本:ひとことで言えば、「魔女の恋」です。わたしは「禁忌」という要素を物語に取り入れるのが好きなんですが、魔女にとって恋はまさにタブーです。それがなぜ「タブー」であるかが、この『MOON』という物語のミソでして。

 

タカハシ:おお。魔女は恋すると死にますか。

 

坂本:死んでしまうわけではないのですが、存在をゆるがす一大事です。

というのも、主人公である魔女三姉妹は「三人が心を合わせたときのみ、魔法がつかえる」という〈三位一体〉の魔女なんです。

 

タカハシ:ええ。

 

坂本:あ、ちょっと待ってください。いま、主人から今日のお夕飯についての問い合わせメールが・・・

 

たみお:マイペース笑

 

タカハシ:菜の花がいま安いですよ。旬です。

 

たみお:菜の花のおひたしと、サバ焼きましょう。

 

坂本:なんか、プレッシャーが・・・。すみません、つづけます。

 

たみお:ふふふ。

 

タカハシ:どうぞ!

 

坂本:「恋」というのはものすごい力をもっています。恋をしたが最後、気持ちは好きな人のことでいっぱいになってしまう。「三姉妹で心を合わせる」隙間なんてなくなってしまうくらい。だから、三姉妹の誰かが恋をするということは、お互いにとって脅威なんです。

『MOON』には二つの恋が登場します。

ひとつは、末っ子の恋。初恋です。姉たちは彼女に恋をあきらめさせようとしますが、末っ子はどうしてあきらめなくちゃいけないのかも、ほんとうのところはまだよくわかっていない。幼い少女の、初々しい恋です。

タカハシ:なるほど。もうひとつの恋は・・・?

坂本:もうひとつは、長女の恋です。末っ子よりも、もちろん経験豊富です。長女は「三位一体の魔女」であるがゆえの恋へのジレンマを知っている。その長女の気持ちが、末っ子の恋を主旋律とするならばひそかな裏旋律のように奏でられます。

・・・すみません、タカハシさん、観ていただくのにネタばれしまくってます。

 

タカハシ:いえいえ! もちろん大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます。

恋の力。恋は病気とも言われるし、生きていく不条理さそのものだとも私は思います。理由がないですからね。 恋に苦しむ人は、例えば、どうやって恋と向き合うべきのでしょうか。

>坂本さん

 

たみお:いい質問!

 

坂本:難題すぎますね!うーんと・・・

生きていく不条理さって、ほんとうにそうですね。

恋と向き合うというのは、自分と向き合うことに他ならない。あまりに苦しいなら、そこから降りることも必要になるのでは。でも、「恋をした記憶」はずっと自分を助けてくれる気がする。のちのちまで。恋ほど深く、強く、自分にものを思わせてくれるものはないから。自分を動かしてくれるものはないから。

 

たみお:ちょうど今日話したトアル学生さんが、失恋の痛手でひとつ舞台をたちあげて、先日公演を行ったんですって。失恋相手に見に来てほしかった、と話していました。恋するがゆえの推進力、いいなあ、と。みるかっち、いいこと言う。

 

タカハシ:恋をしても一人、ですからね。 相手の気持ちなんてどうやってもどうこう出来ないし、お互いで築き上げるしかないんだというのに気付かないといけない。 作品を作るのは、その代わりだったのかもしれませんね。

 

☆☆☆

 

タカハシ:たみおさんは、この話をどう演出したいと思われましたか?

 

たみお:実はですね、この三位一体という設定。これは、私の演出したいプランから、みるかさんが逆算して出してくれたんです。

普通なら、脚本がまずあって、演出プランが立ち上がる。のが、大半だと思うのですが、私のみたい景色を断片で話して、かけらをそのままえいっとなげて、みるかさんが、物語へと、つなげてくれたんです。

 

タカハシ:再構成というより、物語を生み出した。

 

坂本:〈三位一体〉は、確かにたみおさんの見たい絵を実現するために提案した要素なんですが、キャスティングからの発想であるところも大きいです。

女優さんが三人ともすごく素敵で。三人を生かして、たみおさんが遊べるように……って考えて、「魔女だ!」それも「三位一体の!」ってなりました。

 

たみお:本当、個性がそれぞれき際立つ三人の女子。

 

タカハシ:俳優から着想を得た。

 

たみお:それをどう魅せるか。三位一体と、魔女という設定は、とてもとても有り難い設定でした。それを提案してくれて、そこから、坂本さんと私との、物語を紡ぐ長い旅がはじまりました。ミルフィーユみたいだな、といつも思っていました。お互いに、提案しあいながら、物語を紡いでいく。こちらがどんな提案をしても、かならず物語の本筋を見失わず脚本にしていってくれる。ずっと楽しく、有り難い時間でした。

 

坂本:たみおさんは「見たい景色」や「お客様を連れていきたい空間」について常に想っているひとです。だから提案はいつもビジュアルや演出に関するアイデアなんだけ れど、そこには彼女が言葉にしない「物語」が埋まっている。ユリイカ百貨店のファンのかたは、それを味わいに劇場に足を運んでくださっているはず。その物語世界と、自分の個性(エゴともいう)をどう美味しいミルフィーユにするかが、最高に難しく、また奥が深いところでした。

 

タカハシ:なるほど。作家としてテイストが少し違いますからね。 すみません、可能なら、 3人それぞれの「面白可愛い部分」を一つずつ挙げて下さいませんか。 (ちなみに、私のタイプです)

 

たみお:森本久美さんは、魔女三姉妹の次女を演じます。深い声の持ち主なのに、愉快な視点で、いつも魅了されます。

長女を演じる中村こず恵さんは、怒っても可愛い。ユリイカの描きたい女の子像をいつも体現してくださいます。

三女を演じる野尻祈さんは、とても美しい声で歌を歌うのですが、それ以上に、まさに、「いのりワールド」といえるような、独特な表現をします。それをいかに壊さず、いかに物語にそった表現に落としこむか、今まさに格闘しているところです。

 

タカハシ:そんな3人の魔女が、どんな想いの重なり方を見せてくれるのかが楽しみです。

 

☆☆☆

 

たみお:この恋をどう演出するか、について少しだけ。

 

タカハシ:はい。よろしくお願いいたします。

 

たみお:演出する人間の、または脚本をかく人間の、視点や価値観がまさしく舞台に現れるわけですが、私は、少し「恋」から離れて生きていました。もう次に恋をする機 会はないだろう、と思っていました。でも、「恋」について今一度取り組んてみたかった。それは、恋から一度は離れてみると、なんとも恋の時期が眩しく、輝いてみえたからです。

もうオバハン視点かもしれないけれど、笑

 

坂本:物語にし、舞台にすれば、それを書いているあいだ、それについて取り組んでいるあいだ、またずっと恋の中にいられるものね。恋について、おしゃべりもできる。

 

たみお:そう。恋について、おしゃべりしたかったのかも。笑。 恋が与えるもの、苦しみも、悩みも、自分への自問自答も、その全てが愛しく思えた。

だから、恋をしている人も、恋を手放した人も、これから恋をする人も、すべてそれぞれに素敵に仕上げよう。

 

坂本:たみおっちは、まなざしが広くて、深い。脚本の話をしているときも、稽古を観ているときも感じる。

 

たみお:みるかっちありがとう。タカハシさん、すみません。お互いに褒めあって高めあう関係なんです。シルクドソレイユ形式です。

 

坂本:ほめあう現場は良い現場!(自論)

 

たみお:その自論同じく。シルクドソレイユは、褒め合いながら嬉しくて、すごいハードルを越えていくんだよ。

 

タカハシ:仕事はいつもそうあるべきだと思いますよ。 発言しやすい現場の第一歩だと思います。

 

☆☆☆

 

タカハシ:さて、いま片思い中の人にとっては、とりわけ密やかな体験になりそうですね。 その辺りいかがでしょうか。

 

たみお:ぜひ見に来て欲しいです。片思い、最高です。今思えば苦しくて苦しくて、もんどりうって、マグマがたぎる時期ですよね。

でも、この脚本では、好き、から始まって、私は何を与えることができるのか、まで描かれています。

 

タカハシ:何故好きになってしまうんだろう。与えられる者になんか成れるんだろうか

 

たみお:それをね、七転八倒しながら、自問怒涛しながら相手とともに知っていくのが恋だと思います。あ、自問自答です。

 

坂本:自問怒涛でも、なんかよくわかる。笑

 

たみお:なぜ好きになるかっていうともう遺伝子に組み込まれた部分から説明はつくそうですよ。ロマンチックじゃないけれども。

誰かを好きになるのは、ここまで命が運ばれてきた運命。

その相手とどういう関係を築いていけるか、は、互いの努力。

 

坂本:それこそシルクドソレイユ形式でいければいいけど、そこにいくまで時間がかかるね。

 

たみお:かかるね。

 

坂本:「オトナの会」のお客様には、男優陣にもぜひご注目いただきたいです。

大木湖南さんには、ほんのすこしビターな部分も背負ってもらっています。友井田亮さんの存在はユリイカ百貨店の核。彼の声には幸福感を呼び覚ますものがあると感じます。そしてパフォーマーの尾上一樹さんは……上演までのお楽しみです。

 

たみお:「オトナの会」でしか見れない演出も計画していますよ。

 

坂本:知らんかった!

 

たみお:ふふふ。

 

タカハシ:そうなんですね!楽しみです。

あ、私そろそろ出ます。ありがとうございました。

 

たみお:タカハシさん、ご無理を聞いてくだって本当にありがとうございました。

 

坂本:お忙しい中、本当にありがとうございました。当日、会場にてお待ちしております!

 

 

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最後まで読んでくださってありがとうございます!